ドミニク・チェン✕鞍田崇
ふたりの対話はチェン氏が探求している“発酵”の概念をめぐって広がっていく。チェン氏は、“発酵”とはさまざまなものが時間をかけて相互に影響しあって別のものに変容すること。鞍田氏は例として、天然の藍の中には色の成分になるのは5%ほどであり、その他の成分は“雑”であると述べる。多様に相互関連することによって生み出されるのが文化であり、技術や経済も、非人間である生物・微生物も含めた存在との多様なコミュニケーションにより“発酵”していく世界について語り合う。

撮影:荻原楽太郎
ドミニク・チェン
早稲田大学 文学学術院 教授

1981年生まれ。博士(学際情報学、東京大学)。NTT InterCommunication Center研究員、株式会社ディヴィデュアル共同創業者を経て、現在は早稲田大学文学学術院教授。大学では発酵メディア研究ゼミを主宰し、「発酵」概念に基づいたテクノロジーデザインの研究を進めている。近年では人と微生物が会話できる糠床発酵ロボット『Nukabot』(Ferment Media Research)の研究開発や、不特定多数の遺言の執筆プロセスを集めたインスタレーション『Last Words / TypeTrace』(遠藤拓己とのdividual inc. 名義)の制作など、国内外で展示も行っている。
鞍田崇
哲学者・明治大学理工学部専任准教授

1970年兵庫県生まれ。1994年京都大学文学部哲学科卒業、2001年同大学大学院人間・環境学研究科修了。博士(人間・環境学)。総合地球環境学研究所などを経て、2014年より現職。主な著作に『民藝のインティマシー 「いとおしさ」をデザインする』(明治大学出版会 2015年)、『工芸批評』(共著、新潮社 2019年)、『民藝のみかた』(監修・解説、作品社 2024年)など。民藝「案内人」としてNHK-Eテレ「趣味どきっ!私の好きな民藝」に出演(2018年放送)。