第三部

現実を変える方法
大南信也✕三浦亜美✕塩瀬隆之

過疎というと悲劇的に思われるが、大南信也氏はむしろ、人口が減少していくなら、人口を増やそうと考えるのではなく、若者が働きやすく暮らしやすいと思えるような状況をつくり、人口の構成そのものを変えていくという考え方、すなわち「創造的過疎」という考え方で徳島県神山町の地域づくりを行なっている。一方、三浦亜美氏は農業や漁業、伝統工芸や食品などをAIとつなげたり、あたらしい投資の仕組みをつくりだしたりしている。ふたりの活動紹介ののち、ファシリテーター塩瀬隆之氏から発想の転換の仕方、あたらしいことを始める一歩についてなどの質問が投げかけられた。大南氏は「枠組みをつくってからやりはじめても枠の外には出られない」「自分の想定しないところに連れていってくれる道を選ぶ。そうしたら、自分でやったことに対する変化がその周辺に現象として現れてくる。変化の向こうにある変化をのぞいてみたい、という好奇心がモチベーション。それは自分の内側にあるものだから与えられたものではない」と述べている。三浦氏は「それぞれの正義の上にいろいろなものが成り立っている。それを大切にコミュニケーションすることが大事」と言う。塩瀬氏はふたりの姿勢の“素直さ”を指摘する。ここで述べる“素直さ”とは、やるべき真理に愚直に向き合うという意味で、自分の持っているものを使って、まずは自分の周りから変えていくことは誰もができるはずのことではないかと締めくくった。
大南信也
特定非営利活動法人グリーンバレー理事

1953年徳島県神山町生まれ。1990年代初頭より過疎化した地域が生き残るための解決策を見出そうとアートと環境を柱に地域と世界を繋ぎ、グローバルで創造的な地域活性化を展開。ワーカーズ・イン・レジデンスを通じて若者や起業家の呼び込みを図ったり、ITベンチャー企業のサテライトオフィス等を誘致することによって、多数の雇用を創出。「創造的過疎」を持論にクリエイティブな人材の集積による地域課題の解決に取り組んでいる。ふるさとづくり有識者会議委員(内閣官房)、文化審議会文化政策部会委員(文化庁)等を歴任。現在徳島大学客員教授、青山学院大学ビジネススクール客員教授、東京大学まちづくり大学院特別講師。
三浦亜美
株式会社ima代表取締役CEO
志本株式会社代表取締役

愛知県名古屋市出身。2013年に株式会社imaを創業し、一般社団法人awa酒協会の立ち上げや杜氏の技をサポートするAI-sakeプロジェクトを手掛けてきた。2020年には、志ある企業の事業承継をサポートする投資会社として「志本(しほん)株式会社」を創業し、匠の技や日本の伝統文化の継承として、レガシー産業にテクノロジーや金融を実装させ、現代へのアップデートに取り組んでいる。一般社団法人awa酒協会初代代表理事(2016年)。つくば市まちづくりアドバイザー(2017~2020年)。スタートアップ・エコシステム東京コンソーシアム アドバイザー(2020年~)。デジタルハリウッド大学 特任准教授(2019年~)。筑波大学 非常勤講師(2021年~)。
塩瀬隆之
京都大学総合博物館 准教授

京都大学工学部精密工学科卒業。京都大学大学院工学研究科修了。機械学習による熟練技能伝承システムに関する研究で博士(工学)。経済産業省産業技術政策課 課長補佐(技術戦略)を経て2014年7月より京都大学総合博物館准教授に復職。NHK E テレ「カガクノミカタ」番組制作委員。日本科学未来館“ おや? ” っこひろば総合監修者。平成29 年文部科学省 中央教育審議会委員(数理探究)、経済産業省産業構造審議会イノベーション小委員会委員・若手WG座長、文化庁文化審議会博物館部会委員、2025年大阪・関西万博政府日本館基本構想有識者ほか。平成29 年度文部科学大臣表彰・科学技術賞(理解増進部門)ほか受賞多数。著書に『問いのデザイン』(HRアワード2021最優秀賞)、『インクルーシブデザイン』(学芸出版社、2014)ほか。