SUMMARY 第一部
村上祐資

村上祐資

南極や北極などの極地に滞在し、閉ざされた空間の中での暮らしを考える極地建築家の村上氏は、極地建築家とは、南極や火星の基地などの隔絶された環境の中での暮らしを通して、人と住まいの関係、その原点と未来を考える仕事だという。宇宙服を着た屋外での作業が注目されがちだが、実際には暇な時間も多く、そこでは閉鎖空間の中での地味な生活がある。極地の暮らしの基本は「よく食べて、よく寝て、よく笑う」こと。そして、「そこにあるものでどうやって楽しむか」なのだと村上氏は言う。村上氏は自身の経験からチームのあり方には「焚火型のQOL1チーム」と「温泉型のQOLチーム」のふたつがあるという。「焚火型」はひとつのミッションや理念を中心にみんなが集まり、問題があればみんなで解決に向かう。しかし、分断も生みやすい。一方、「温泉型」は、別にみんなが仲良くなかったとしても、それぞれ温泉につかって同じようにぬくぬくした気分を味わえる、というチームの作り方だ。いろいろな問題は起きるし、それぞれ十人十色なので合わないのは当たり前だ、というところを緩和しながら時間を共にすることだというのだ。それはそこにあるものの中でユーモアを交えて生活していくことであり、「survive」ではなく「alive」、「意志の力」ではなく「気分の力」で厳しい時間を乗り越えるということなのだと村上氏は締めくくった。

1 Quality Of Life(生活の質)
村上祐資
極地建築家、NPO法人フィールドアシスタント代表
1978年生まれ。極地と呼ばれる厳しい環境下での暮らし方を探すため、南極やヒマラヤなど、さまざまな極地の生活を踏査している極地建築家。2008年に第50次日本南極地域観測隊に越冬隊員として参加し、昭和基地に15カ月間滞在。2013年、アメリカの研究団体The Mars Societyが発表した「Mars160」計画では副隊長に選ばれ、2017年よりユタ州ウェイネ砂漠および北極圏デヴォン島で計160日間の実験生活を完遂する。2019年には退役した元南極観測船を活用し、日本初の閉鎖居住実験「SHIRASE EXP.」を実施。
www.fieldnote.net
Yusuke Murakami
Extreme Field Architect / Founder of FIELD assistant
Yusuke Murakami (b. 1978) is a field architect who has explored life in extreme conditions, such as the Himalayas or Antarctica, in order to find ways of living in harsh environments. In 2008 he became a member of the winter crew of the 50th Japanese Antarctic Research Expedition and spent fifteen months living at Syowa Station. In 2013, Murakami was chosen as the executive officer for American research group The Mars Society’s “Mars160” project, completing a total of 160 days in simulated Mars conditions in the Wayne Desert in Utah and on Devon Island in the Arctic in 2017. In 2019, he utilized a decommissioned Antarctic exploration ship to realize “SHIRASE EXP”, the first closed-habitation experiment in Japan’s history.
www.fieldnote.net