SUMMARY 第一部
池上高志

池上高志

東京大学教授で人工生命(A-Life)の研究を行っている池上氏は、人工生命とそれがもたらすあたらしい可能性についての基調講演を行なった。
池上氏は、コンピュータによる革命は2008年頃にすでに始まっていると述べた。限られたデータを近似して理論をつくり理解してきたこれまでの科学から、過剰なほど大きなデータを素早く詳細に解析することができるようになったことにより、新たな科学へのアプローチの方法が可能になっているのだ。30年ほど前から始まったA-Lifeの研究は、コンピュータを使って生命性を技術的に再構成することが可能かという命題だ。人間には一千億の神経細胞がつながっている。生命的な複雑さを作るためには、ルールだけでなく詳細さと量が必要だ。だが、そこに一見全く関係ないような性質が立ち上がることがある。さらに、その複雑な不安定さの上に、語り得ない制御不能なものも立ち上がるのではないか。そこに安定した意思や記憶などといったものがあると考えたい、と池上氏は言う。未来のあたらしいユートピアをいかに持てるかを考えた時、そのための技術としてA-Lifeが切り開く可能性は大きい。
池上高志
東京大学 教授
物理学で東京大学から博士を取得。主に、コンピュータや化学実験、ロボット実験の中で、人工的に生命を作ろうという研究に従事している。主な業績は、日本語の著作としては、動きが生命を作る(青土社 2007), 生命のサンドウィッチ理論(講談社 2012)、人間と機械のあいだ(共著、講談社、2016) などがある。人工生命の国際会議に参加し、20周年記念の会議ではkeynoteを務める。その一方で、渋谷慶一郎らと2005年からアート活動に従事。Filmachine (YCAM 2006) 、Mind Time Machine (YCAM, 2010)などがある。
Takashi Ikegami
PhD. in Physics from the University of Tokyo.
His work focuses on building and studying artificial life systems by combining computer simulations, chemical experiments and robotics. Professor Ikegami’s research has featured in notable publications including Life Emerges in Motionand The Sandwich Theory of Life, and is a member of a number of editorial boards including Artificial Life, Adaptive Behaviours, BioSystems and Interaction Studies. Professor Ikegami is a frequent attendee of the International Conference on Artificial Life, and delivered a keynote address at the 20th Anniversary of Artificial Life Conference in Winchester, UK. He also started art works with Keiichiro Shibuya since 2005. His important pieces are Filmachine (YCAM 2006) 、Mind Time Machine (YCAM, 2010) and so on.