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為末大

為末大

ハードル競技を通じて、二足歩行者である人間が最も合理的に動くにはどうあればいいかを探求してきた。その後、障害者スポーツに関わるなかで、身体の一部のパーツが置き換わることで、身体の可能性を広げることに着目している。現在はまだ健常者の記録のほうが早いが、パラリンピック選手がパーツをつけることで、健常者よりも確実にもっと早く走り、飛べるようになるだろう。短距離でいえば、カーボン製の義足は反発がよいのでスピードが早くなる。スタートダッシュでは足首があるほうが有利だ。現在「Xiborg(サイボーグ)」というプロジェクトを始め、競技用義足を製作している。義足づくりをしているとさまざまな学びがある。短距離選手は地面を踏んだときに跳ね返ってくる力を受ける途中に膝をうまく折って足を回転させている。この際に重要なのは足首のコントロールだ。しかし、義足の選手の記録をとると、その動きができないことがわかった。その結果、義足の走り方は将来、健常者とは異なる走り方になるだろうと思われる。もしかすると、将来は義足の反発を抑えるために上半身の力を使うようになり、体型が変わるかもしれない。
走りの仮説と検証を行える場として「新豊洲Brilliaランニングスタジウム」をつくった。将来、パラリンピック選手が練習しながら義足を調整して東京オリンピックを目指せるようにしたい。私のパートナーのエンジニア遠藤謙はいつも「障害というものはない。いつも技術の欠損が障害を生み出している」と言う。障害という言葉がテクノロジーの力でなくなる時、障害を持つ人々が早く走ったり、身体を動かすことを楽しめる未来がくるだろうと思っている。
為末大
1978年広島県生まれ。陸上スプリント種目の世界大会で日本人として初のメダル獲得者。2001年エドモントン世界選手権および2005年ヘルシンキ世界選手権において、男子400メートルハードルで銅メダル。シドニー、アテネ、北京と3度のオリンピックに出場。男子400メートルハードルの日本記録保持者(2016年8月現在)。2012年、25年間の現役から引退。現在は、自身が経営する株式会社侍、一般社団法人アスリートソサエティ、株式会社Xiborgなどを通じて、スポーツと社会、教育、研究に関する活動を幅広く行っている。
Dai Tamesue
Born in Hiroshima in 1978
First Japanese sprinter to win a medal in a track event at a World Competition. Current Japanese record holder for Men’s 400 meter hurdle (as of August 2016).
Bronze medalist of the 2001 World Championship in Edmonton and the 2005 World Championship in Helsinki.
Represented Japan for Sydney, Athens, and Beijing Olympics. Started running professionally in 2003. Retired from 25 years of competitive athletics in 2012.
Pursuing ways to pass on the benefits of sports into society through associate organizations; Athlete Society (Chief Administrative Officer, Founded 2010) and Xiborg (Founded 2014 ).